誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




「賢吾くん、これから終わるまで、腕を動かさないでね。動かしちゃうと、またお注射することになっちゃうぞー」

『…いいもん。お姉ちゃんがしてくれるもん。』

「クスッ…残念。お姉ちゃんはこれからお家に帰るのです!」

『ぇえー!?』

「だから、お静かに、安静にね、賢吾くん。」

『……うん。』

「良い子。じゃ、また明日ね。…お大事に。」


賢吾くんの頭を撫でて、点滴セットを取って、病室を出ようとすると、


『お姉ちゃん、名前は?』

「……水川 愛実。愛実姉ちゃんって呼んでね。」

『うん!おやすみなさい!あゆみねぇちゃん!』

「おやすみ、賢吾くん。」


手を振ると、振り返してくれた賢吾くんのことを可愛いなぁと思いつつ、病室を出た。


「…結婚してたか。」


高ぶる感情を抑え、ナースステーションに戻った。