誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




「ありがとうございます。」

『…さすがです。』

「……??」


何が?

緒方さんの言葉に疑問が残るが、今は賢吾くんが先なので、賢吾くんに水の入ったコップを渡す。


「まだ口の中嫌なものでいっぱいでしょ?これでグジュグジュしておとそう。」

『……』


水の入ったコップと、嘔吐物用の入れ物を渡して、喉洗いをさせているうちに、私は飛び散った嘔吐物の片付け。


『水川さん、マスク。』

「ぁ、ぁあ、ありがとう。」


ビニール手袋をして、もう嘔吐物を触った後だったので、緒方さんがマスクを着けてくれた。

10分ほどで嘔吐物の処理は終わり、賢吾くんの熱を計ると、少し下がっていた。

その間にベッドメイキングを終えた釘宮さんが帰ってきて、私は車いすに乗った賢吾くんを運ぶこととなった。