誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




『はぁ…っ…はぁっ…』

「賢吾くん…」


辛いよね…。

あ、ビニール。


ノロは、嘔吐下痢といった症状が出る。

まだこの段階で、嘔吐も下痢もしていないということは今夜か明日にかけてする可能性が高いということ。

すぐビニール袋を持ってきて、賢吾くんの頭の横に置いた。


「賢吾くん、吐きそうになったら、このビニールの中に吐いてね。」

『っ……』


返事をする余裕がない賢吾くんは首を縦に振るだけだったが、しっかりと目はあったので、理解したと認識した。


ガラッ

『賢吾!』

『賢吾くん!』


いきなり診療室が開いたと思ったら血相を変えた母親と新様がやってきた。


『…ベッドは。』

「手配しました。今、釘宮さんにベッドメイキングをお願いしています。」

『そうか…。』


一安心、といった時。


『うっ…』

『賢吾!?』

「!!」


賢吾くんが、吐いた。