誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




『…ノロだな。』

「ノロって…ノロウイルスですか?」

『ぁあ。家族に確認取れ。』

「はい!」


また家族の元に走る私。

人手が足りないというのはこういう時に辛い。


『ぁ、水川さん!診察終わりましたか?』

「ぇえ。」

『看護師さん…!賢吾は…!?』

「お母さん…。あの、質問があります。ここ数日、賢吾くん、何か生ものを食べませんでしたか?」

『え?』

『水川さん、それって…、』

「…ぇえ。それでお母さん、お心当たりは?」


困ったように考える母親。

ノロウイルスは感染病で、誰かに移された可能性もあるけれど、何か生もので当たってしまった可能性が高い。

母親なら分かるはず。

息子がいつ、何を食べたのか。

生ものなんて、とくに。


『そういえば…、』

「思い出しましたか!?」

『生卵!あの子、卵かけごはんがとても好きで、昨日の夜も――!』


それだ!

生卵…なるほどね。