~11年前の冬~


俺はいつも通り
親父の横にいた。


院長の親父は
資料確認の仕事が多く
俺が横にいても
支障はなかった。


だから俺は毎日
親父の元へ行っていた。


母さんは2日に1回
来てくれた。


家族3人でいる空間は
すごく心地よかった。


「はぁ…」


親父が悲しそうに
ため息をついた。


「どーしたのぉ??」


俺は膝から親父を見上げた。


「けい…お前はちゃんと
パパとママの愛を
感じてくれているか??」


俺の頭を優しくなでてくれた。


「うん!!」


俺は満面の笑顔で
答えた。


「それはよかった。
産んだ子をな、
愛さない親がいるんだよ」


親父は顔を歪めた。


「好きじゃないって、ことなのぉ??」


「そういうことだな」


「さみしいよ、その子」


俺は目に涙が
たまっていた。


「けい…お前は優しいな」


俺は親父の腕のなかで
泣いていた。