一途な彼女と意地悪な彼の物語

放課後、私は先生に会えないまま帰ろうとしていた

下駄箱まで来たとき

「おい」

矢沢先生の声がした

一度立ち止まってしまったけど

きっと呼ばれてるのは私じゃない

周りには私以外にもたくさんの人がいた

私はまた歩き出した

「おい!」

肩を掴まれた

「わっ!びっくりした…」

私の肩を掴んでいたのは矢沢先生だった

「お前、なんで無視するんだよ」

「葵に言ってたの?」

「お前以外誰がいるんだよ」

そんなの名前言われなきゃわかんないよ…

「ってか、どうしたの?」

「これ」

先生はポケットから何かを取り出した

「あ、カイロ」

私はそれを受け取った

「まだ温かい?」

「あぁ、俺の温もりがつまってるからな」

受け取ったカイロは温かかった

「じゃあな」

「うん、バイバイ」

先生はそのまま体育館の方へ歩いて行った

きっとこの後は部活だな…