一途な彼女と意地悪な彼の物語

体育館に着くと矢沢先生は靴を変えていた

「先生ー!おはよ」

「おはよう。お前、荷物置いてこいよ」

私の鞄を見ながら先生が言う

「時間なかったの」

「…」

先生は何も言ってこなかった

あっ…そうだ

「ねぇ、先生。先生って彼女いるの?」

「おぉ、100人いるよ」

嘘だろ…

「嘘?」

「本当だよ」

「じゃあ、クリスマスはその彼女達と過ごすの?」

「また、その話かよ」

「過ごすの?」

「知らねぇ」

なんだよ…それ…

下駄箱の近くの階段まで来た

私は先生の服の裾を引っ張った

「離せ」

「イヤだよ」

「わかったから」

何がわかったのか全然わからない

「鐘鳴るぞ」

「…」

私は渋々手を離した

先生は何も言わず歩いて行った