一途な彼女と意地悪な彼の物語

「先生、さっきの話。葵のこと?」

「あ?」

「舞台の上で言ってたじゃん。特に僕の目の前にいる奴が1番心配ですね、とか言ってたよね?」

「だったらなんだよ」

嬉しい…

本当に私のことを言ってたんだ

嬉しいな…

「嬉しいなって思っただけ」

「何が嬉しいんだよ」

「別にぃ」

頬が緩む

「何笑ってるんだよ」

「別にぃ」

「意味わかんねぇ」

「わからなくていいよー」

私は久しぶりに先生の服の裾を掴んだ

スーツなので掴みにくい

「掴むな」

「いいじゃん」

「あのなぁ…」

「うん」

先生は何言ってこなかった