「実はさ。春休みの前日の朝、矢沢先生と話してたんだよ」

少し経ってから小松先生がそう切り出した

私もだいぶ落ち着いてきた

「何を?」

聞いていいのかわからなかったけど聞いてみた

「矢沢先生が学校変わること」

「…」

私は黙って聞いた

「俺は早めに言っておいた方がいいと思ってたからさ。言ったんだよ矢沢先生に。そしたら矢沢先生、別に言わなくていいって言ったんだ」

そうなんだ…

「俺、神崎泣きますよって言っちゃったんだよ…」

「それで矢沢先生は…?」

「だったら、なおさらだって。今言っても、始業式で聞いたとしてもあいつは泣く。今言ったらあいつは春休みも引きずることになる。あいつは1週間で立ち直るようなやつじゃない。そんな風だったらあいつは今まで1回も泣かなかったはずだ…って言ったんだ」

そうだったんだ…

つーか、私が泣いてたこと知ってたんだ

私は少し泣き虫なところがあって先生に少しひどいことを言われると泣くことがあった

「俺が最後にできるのはあいつの悲しみを少しでも減らすことだ。1週間はさすがに我慢してもらう。今日から離任式までは結構時間あるけど、始業式から離任式まではすぐだろ…きっととも言ってたな…」

先生…

また、涙が溢れた

「矢沢先生のそれが矢沢先生の優しさなんだよ。伝わりにくいところも
あるけどな…」

「うん…」

わかった…

全部…全部わかったよ…