一途な彼女と意地悪な彼の物語

HRが終わった

千波は部活があるとか言って忙しそうに教室を出て行った

千波、夏で引退だもんな…

しぃは恭弥に用があると言って教室を出た

気付けば紗英ちゃんも教室にいなく、私1人になっていた

私は体育館へ向かった

今でもまだ、信じられない…

先生がもうここにはいないなんて

私は体育館の前にある教師用の靴箱を見た

そこにはもう先生の白に黒いラインの入ったシューズは置いてなかった

先生がいないってことを強く感じた

涙が頬にこぼれ落ちる

私は上靴を脱ぎ捨てて体育館の中へ入る

「先生…」

小さな声で言ってみる

いつもなら、何かしら返事をしてくれた…

だけど先生の声は聞こえない…

ここには思い出が多すぎる

ねぇ、先生

ここでいろいろな話をしたね

先生はいつも興味なさそうな顔をしていたけど、私の話を最後まで聞いてくれたよね…

2人でバスケをしたこともまだ覚えてるよ

先生はやっぱり、バスケ部の顧問なだけあって上手だったね

先生…

ここで先生に泣かされたこともあったね

先生の言葉に悲しくなって泣いちゃったけど、それでも先生のことが好きだって思ったんだ

たった数日前まで先生はここにいたのに…

私に手を差し出した

その手は私の手なんかより全然大きくて、ゴツゴツとしていた

私はきっとあの手の感覚を忘れることはできないよ…