と、
「走れ、ほのか」
言って田所が駆け出した。
「え?」
訳がわからず、頭の中がパニックに陥る。
けれど、田所にもの凄い力でグイグイ引っ張られ、転ばないようにと足を必死に動かした。
田所は自分のクラス、7組を通り過ぎ、突き当りの物理実験室まで来ると、ようやく立ち止まった。
そうして繋いでいた手を不意に離した。
私の手がスルリと落ちた。
温もりを失った私の右手がみるみる冷えていき、また不安になる。
ゆったりとした動きで、田所が目の前のスライドドアを開けた。
誰もいないガランとした教室には、長机が規則正しく並んでいた。
物理実験室なんか、初めて見る。
無機質なその空間は、どんなことをする場所なのか想像すらつかない。
文系の私なんかが足を踏み入れてはいけない、異世界のように映った。



