決して裏切った訳ではないのに、罪悪感がある。
田所に優しくされればされるほど、それは私の中で大きくなった。
どうしたらいいのか。
わからない、わからないよ。
三年一組の教室の前で立ち止まり、スカートのポケットから屋上の鍵を取り出した。
私の横を通り過ぎようとした女子生徒に、
「あの」
と声を掛ければ、彼女は足を止めてくれ、「ん?」と首を傾げた。
「イイジマチカシ先輩って知ってますか?」
ビクビクしながら尋ねれば、
「ああ、5組の?」
と返って来た。
「5組ですね、ありがとうござ……」
「貸して」
田所がお礼の言葉を途中で遮って、私の手から屋上の鍵をスッと抜き取った。
そうして、その女子生徒の目の前でそれをブラブラさせながら、
「先輩、申し訳ないんですけど、これ、その人に渡してもらえませんか?」
言って、まるで子どものように無邪気に笑って見せた。



