「ふざけんな。
てめ、俺にここまで来させといて。
俺も行く」
最も恐れていた言葉をその口から落とした。
本当に。
どうしたら良いかわからなくて、泣きたくなった。
と、たちまち田所の顔が不安気に染まる。
漆黒の瞳を揺らしながら、「何かあった?」と聞かれ、とうとう視界が滲んだ。
「鍵……返さなくちゃいけなくて。
三年……生に」
声を絞り出すようにしてやっとのことで答えると、田所はそれ以上何も聞かず、「ついてってやるよ」と私の手を取った。
教室を出て廊下を歩きながら田所は、
「何組?」
と柔らかい口調で聞く。
そんな気遣うような態度も、私を苦しくさせる。
「わからない」
俯いたまま答えた。
「んじゃ、1組から攻めるか」
冗談っぽく言って、田所は繋いでいる手にキュッと力を込めた。



