「うん、平気」
と答えてはみたけれど、顔がどうにも突っ張ってしまって、巧く笑えない。
「お前、何やってんの?」
今一番会いたくない人の声が間近で聞こえ、背中を冷たい感覚が走った。
咄嗟に、ブラウスを掴んで、見られたくない部分を隠した。
朱莉ちゃんと二人して見上げれば、田所は相変わらずの無表情で私たちを見下ろしていた。
田所はすぐに状況を把握したらしく、
「そんなまな板みてぇな胸で、どうやったらはち切れるんだよ?
ミステリーだな、殺人事件だな、湯けむり殺人事件だな」
などと面白がって言う。
「い……意味わかんない、バカじゃないの?」
しまった、どもった。
田所が一瞬真顔になったのを、私は見てしまった。
けれど、すぐまたバカにしたように笑うと、
「どもってんじゃねぇよ、だっせ」
軽く握った拳で、私のこめかみを優しく押した。



