冬以は背の高いフェンスの外側に立ち、左手には携帯電話、空いている右手は、私に向かって振っていた。
その顔には、子どものように無邪気な微笑みを浮かべて。
気持ち悪い。
吐きそう。
けれども、放っておく訳にもいかなくて。
冬以は『飛び降りる』という言葉を口にしたから。
「危ないよ。
今すぐ、フェンスの中に戻って」
『あんたが来るまでここに居る』
私の説得など全く受け入れることなく、冬以はそう言い張った。
「わかった、すぐ行く」
従うしか無かった。
だって後追い自殺って、実際にあるから。
冬以をもしこのまま死なせたら、絶対に後悔する。
そして、私だけでなく、田所まで更に苦しめる。
そう思ったから……



