わたしとあなたのありのまま ‥2‥



 何の考えもなく、ドアを開けて田所の部屋に入った。
 そのまま勢いに任せて上がり込めば、田所はキッチンのゴミ箱の傍らに立ち尽くしていた。
 その手にはもう、さっきの百合の花は握られていない。

 捨てたんだ。

 そう思ったら、何故だかとても苦しくなって。
 軽く眩暈すらし、その場に崩れそうになるも、肩で呼吸しながら両足を踏ん張って耐えた。


 ゴミ箱に落とされていた視線を、田所はゆるゆると私へ移し、

「何?」

 と。
 冷ややかに問うから、背筋がたちまち凍りつく。

 堰を切ったように、止め処なく涙が溢れ出た。

 私の方が聞きたい。
 わからないよ、
 わたしは、あなたの何?


「ごめん、何でもない」

 嗚咽交じりに、見え透いた白々しい嘘を言い、くるりと身体を回転させ、小走りで部屋の出口へ向かった。