わたしとあなたのありのまま ‥2‥



 田所は会いたくないと言った。
 だから、どうしたらいいかわからず、黙ったまま見詰めていると、

「あいつとしゃべった?」

 田所が虚ろな目で百合を指して問う。

 『あいつ』とは多分、ゆきさんの彼のことだ。

「うん、これ、田所に返してって言われた」

 もしかしたら凄く残酷な言葉かも知れないのに、思わず真実を答えてしまい、すぐに後悔した。
 けれど、もう引くに引けず、私が百合を差し出せば、田所は静かな動きでそれを受け取ると、再び部屋の中へ消えた。


 パタン、とドアが空しい音を立てて閉まった。


 もう嫌だ、耐えられない。

 田所はこんなにも近くにいるのに、もの凄く遠く感じて。
 田所の心がどんどん離れてゆく気がして。