わたしとあなたのありのまま ‥2‥



 やがて彼は、まるでプッツリと糸が切れたかのように、私の手首を掴んでいた右手を、ダランと重力に委ねて垂らすと、それ以上は何も言わず、クルリと身を翻して背を向けた。

 ゆっくりと、静かに離れていき、そして、ゆきさんの部屋のドアに呑み込まれて消えた。


 パタンと、乾いた音を立てて扉が閉まった。
 その瞬間、はぁーっと、大量の空気が私の口から勢いよく流れ出た。

 無意識のうちに、呼吸すら忘れていたのかもしれない。

 目の奥が熱くなるのを感じ、耐え切れず瞼を落とせば、両の頬を生温かいものが勢いよく伝った。
 それはポツリ、ポツリ、と足元にいびつな形の染みを作った。


 何が起こっているのか、さっぱりわからない。
 違う、わかりたくないだけだ。

 考えたくない。
 田所とゆきさんとの間に何があったのか、なんて。


 どうして、ゆきさんは、
 死んでしまったのか、なんて……