「いらない、こんなもの」
彼の口から弱々しい声がこぼれると、その顔はみるみる歪んでいって。
「あいつに、ゆきの死を悼む資格なんかないから」
言いながら彼は、百合の花を握った右手をグンと振り上げ、頭の少し後ろで構えた。
呆然として見ていると、花は、私の顔目掛けて投げ付けられた。
咄嗟に、固く目をつぶって俯き、左腕を顔の前にかざした。
ペシッと音を鳴らして私の腕で跳ね返ったそれは、ハラハラと白い花びらを散らしながら、冷たいコンクリートの上に落ちた。
「いきなり何すんの?」
つい、怒りに任せて叫んだ。



