「ねぇ、あんた、田所悠斗の彼女?」
不意に背後から声を掛けられ振り向けば、いつの間にかゆきさんの彼が私のすぐ後ろに立って居て。
氷のような冷たい無表情で私を見下ろしていた。
「どうして?」
特に理由はないけれど、なんとなく答えたくなくて聞き返した。
「彼女なら、これ、あいつに返してくれる?」
さっきは気付かなかったけれど、彼の手には百合の花数本が握られていて。
それを私に差し出し、彼はその顔に薄っすらと笑みを浮かべた。
透き通るほどに美しく映るその微笑みは、とても悲しげで。
訳も分からず、胸がキュッと締め付けられた。



