やがて―― 「言いたくない」 と。 ポツリとそんな言葉を落とす。 「は?」 まるで駄々をこねる子どもみたいだ。 ふざけんな、と。 どうしてここぞって時にさえ、この男は甘い言葉の一つも口にできないのか、と。 そんな不満がどんどん私の中で膨らんで、今にも破裂しそうだ。 田所はそんな私の腰と背に両手を回し、ゆったりと抱き寄せた。 宥めようとでもしているんだろうか。 けれど、『抱きしめる』は『カチューシャをはめて見せる』の交換条件だ、当然じゃない。