「上がって貰ったら?」
玄関から顔を覗かせた母は、満面の笑みを浮かべて言う。
「いつから見てたの?」
嫌な予感が頭の中で渦巻いて、ムスッと膨れて問えば、
「覗き見なんかしてないわよ、人聞き悪いこと言わないで」
と返して、ふふふと笑う。
「絶対見てたし」
疑心が確信に変わり、恥ずかし過ぎて今すぐに消えてしまいたいと思った。
そんな中、田所が、
「は、じめまして。
オレ……ちがっ、ボク、田所悠斗って言います。
ほのかさんと同じ高校に通ってます」
緊張しまくって噛みまくりの、間抜けな挨拶をするもんだから、ブッと吹き出してしまった。
たちまち田所がいつもの不機嫌顔になる。
尚更可笑しくて、声を上げて笑ってしまった。



