わたしとあなたのありのまま ‥2‥



 嬉しすぎて、浮かれ過ぎていて、ここがどこだかなんて、そんなことにまで気持ちが行き届かなくて。
 どこか遠い異世界へ、心が旅立ってしまっていた。


 だから、
 家のドアがガチャリと音を立てて開いた時、心臓が止まるかと思うほど驚いた。


 きっと、田所は私以上に驚いたに違いない。
 弾かれたように私から離れ、不自然なほど背筋をピシッと伸ばして真っ直ぐ立った。

 田所の、カチコチの『気を付け』姿勢に、ちょっと笑えて無意識に頬が緩んだ。



 母が、家に居ることを完全に忘れていた。

 今日は休みだった。
 朝私が出掛ける時はまだ寝ていたから、すっかりその存在が自分の中で消えていた。