普通なら恋人に向けられるはずのその言葉に、嬉しさよりも違和感の方が込み上げる。
 やがてそれは、『怒り』に変わってモコモコと膨れ上がった。


「傍に居ない代わりに?」

 意地悪な質問だ。
 けれど、抱いて当然の疑問だから仕方がない。


「傍に居たい。
 ほのかに傍に居て欲しい」

 震える声で田所は答えた。

 そんな風に、辛そうで苦しそうで今にも泣きだしそうな顔をされたら、逃げ場を失ったような追い詰められた気持ちになる。
 

 田所の心の内が全く見えて来なくて、頭が破裂しそうだ。
 何を思って今更そんな言葉を吐くのか。

 わからない。
 そんな顔したって伝わって来ないよ? 何も……