田所がこれを買う場面なんか、全く想像できない。

 すごく恥ずかしかったんじゃないだろうか。
 どうして私なんかの為にそこまで……



「どうして?」

 ただ、理由が欲しかった。

 納得がいく理由を貰って、このカチューシャを付けたいと思った。
 どうしても付けたかった。

 こんな可愛らしいアクセサリーはきっと私なんかには似合わないだろうけど、そんなことはどうでも良かった。



 ほんの少しの間、田所は切なげに瞳を揺らして黙ったまま私を見詰めていた。

 けれどやがて――

「俺があげた物をほのかに付けて欲しかった」

 はっきりとした強めの口調でそう言った。