昨日私が貸したヘアピンだ。
わざわざこれを返しに、ここまで来たのだろうか。
「それとこれ」
今度は左手に持っていた、四角くてペタンコの、折り紙サイズの紙袋を差し出す。
可愛らしい薄桃色の花柄のそれが、余りにも田所に不似合いで、何がなんだかわからず混乱する。
受け取ることを躊躇っていると、
「俺、こういうの良くわかんねぇけど、ほのかに似合うと思って」
はにかんだ苦笑を浮かべて田所が言う。
プレゼントか何かのつもりみたいだ。
けれど、貰う理由が見付からない。
昨日の私たちのやり取りから考えたら、不自然すぎてしっくり来ない。
田所は一体どういうつもりなのだろう。
訳が分からない。



