どうして田所がここに居るのか、さっぱり見当もつかない。
 不安と戸惑いが、私の鼓動をやかましくさせた。


 不意に、田所が視線を上げ、ゆっくりと顔だけこちらに向けた。
 途端、全身の血管が激しく脈を打ち、頭の中が熱でおかされたみたいにぼんやりする。

 不安定な思考は次の行動指示を出してはくれない。

 ガチゴチに強張った身体が自分のものではないように感じて酷く不快で、脱いでしまいたいなどと、出来るはずもない衝動に駆られた。



 痺れを切らしたのか、田所の方がこちらへ向かって歩き始める。

 ゆっくりと時間を掛けて詰められる距離に、激しい動揺を覚え逃げ出したくなった。
 けれど、動けない。

 心と身体がリンクしていない。
 困った、どうしよう。