田所は何も言ってくれなかった。
 黙ったまま、ただ、私を切なげに見詰め返すだけ。

 それでも充分だった。
 田所の気持ちを――苦しみを知るには充分過ぎるほど、その漆黒の瞳が全てを語っていた。



 辛くて居た堪れなくて、勢い良く立ち上がり全力で駆け出した。



 田所を責めてはいけない、そう思った。
 全

部、私が悪いんだ。

 身勝手で自己中で、どうしようもない私のせいだ。


 もう田所のことは諦めよう。
 きっとそれが、私たち二人にとって最善の道だ。

 田所が正しかったのだ。
 悔しいけれど。



 秋の夜風が残酷なほど冷たくて、冬の訪れを濡れた頬に感じた。