「『彼』じゃないし。
『彼女』だし」
敢えて芝居がかった『軍隊ごっこ』はスルーしてやった。
「突っ込むとこ、そこ?」
田所は可笑しそうに笑って、ヘアピンを外す。
それを本当に返されてしまうのかと、たちまち不安になった。
けれど田所は、
「ごめんね、ハニー。愛してるよ」
愛おしげに囁いて、ヘアピンにチュンと軽く口付けた。
そうして、再びそれを元の場所にパチンと留める。
やっぱり田所は、『バカそのもの』なんじゃないだろうか。
本気でそう思った。
それでも胸の高鳴りは激しさを増す一方で。
顔が熱くて額も汗ばんできて。
どんなにアホ臭くてくだらない仕草でも、田所がすると頭の中がグラグラしてしまうほど色気があるから不思議だ。
いや、性質が悪い。



