八方ふさがりだ。

 それなのに、『また田所と一緒にいられるかも』と。
 喜んでいる自分が居るから嫌になる。



 結局、はっきり答えてはいないけれど、

「そろそろ教室戻ろ」

 綾子の一言によって、その話は打ち切りとなった。

 屈託のない笑顔を見せる綾子の中ではきっと、私が同意したことになっているのだ。


 いいけどね、別に。
 どうせ暇だし。
 それに、田所にヘアピン返してもらわないとだし。

 そんな、言い訳染みたことを考えながら、頬にかかった邪魔くさい横髪を、そっと指ですくって右耳に引っ掛けた。