私の自宅前まで来ると立ち止まるも、田所は私の手を握ったまま離そうとはしなかった。
「寄ってく?」
田所が何を考えているのか、いまいち良くわからなかったけれど言ってみた。
母は仕事で夜遅くにしか返って来ないし。
いつもだったら、私のバイトがない日は田所が「家(ウチ)来る?」と聞くのだけれど、今日はそれもなかった。
このままお別れはちょっと寂しい気がした。
「飯、食いに行く?」
不意に掛けられた言葉に驚いて、思わず顔を上げてマジマジと田所の顔を見た。
「んなびっくりすることねぇだろ?
フツーだろ?
俺ら付き合ってんだし」
田所は照れ臭そうに笑う。
けれど、なんとなく違和感があった。
得体の知れない不安が、心の奥深くにモゾモゾと蠢き出す。



