田所はようやく私を振り返って、
「ほのか、サボろ」
軽い口調で言い、悪戯っぽく笑った。
先ほどまでの不機嫌顔はどこへやら、唐突にいつもの調子を取り戻した田所に唖然とし、ポケっと見詰めていると、田所は私の背中をそっと押し、教室の中へと導いた。
私の背中から田所の感触が消え、立ち止まって振り返れば、田所が後ろ手に扉を閉めていた。
密室の中に閉じ込められたような、そんな不安な気持ちになるのは何故だろう。
田所は私の彼氏なのに。
「ほのか」
と。
甘い声音で私の名を呼び、田所の右手が私の顔へ伸びて来て。
いつもなら、とろけてしまいそうになるシチュエーションなのに、小さな恐怖が私の中にポンと生まれ、思わず一歩後退さってしまった。
途端、田所が泣きそうな顔をする。



