「隣に座らせていただきますよ」


エルンストはにっこり微笑み、付き人に目で挨拶をしてから座った。


付き人の女性は驚いた顔になったが何も言わない。


「なぜ隣にお座りになるのですか?」


彼女は困ったようなか弱い声で聞く。


「もちろん、貴方が気になるからですよ 紹介が遅れました 私はエルンスト・アーレ」


エルンストは礼儀正しく自己紹介をした。


「わ、わたしはマリー・ルイーゼ・ヨハンセンと申します 貴方様が気になるほどの者ではありません」


エルンストはヨハンセンと聞いてピンときた。


ヨハンセン家、父親が数年前に亡くなり、後妻に入った女に財産を売り払われ没落した貴族の娘。


その娘がこのパーティーになぜ?


財産を義母に奪われ、コルネリウス学院にも入れないと聞いている彼女が?


彼女は俺の事を知らないようだ。


小首を傾げる愛らしい仕草がなぜかリン妃殿下を思い出し、心が惹かれるのがわかった。