ワケがありまして、幕末にございます。








「ったく…ハァ。

おい市村」


「……はぃ?」


「なんだよ今の間は」


「……イェ特に。

土方をからかいたいだけ、なんて恐れ多くて言えない」


「ばっちし言ってんぞてめぇ!!」


「あははははっ!!」


「総司も何笑ってやがんだ!」




沖田さんの笑いは止まらない。


ツボに入ったみたいだ。


…しばらく放っておこう。




「そういえば何か用あったんじゃ?」


「…ハァ。

今から広間で宴会だ。
主役が遅くちゃもりあがらねぇ、早く来いや」




無造作に結った黒髪をボリボリ掻きながら背を向けて歩いて行った。



あたしはその大きい背に叫ぶ。




「…ため息つくとハゲますよー!!」


「だから俺はハゲねぇっつってんだろ馬鹿野郎!!」




…背からの返答は早かった。



そして、治まり始めていた沖田さんの笑いが再び始まったのは言うまでもない。