ワケがありまして、幕末にございます。





―――あれから数日




「よーう愁、気張ってやってっかー?」




道場で木刀を振り回し終わった後、左之と新八っちゃんが声をかけてくれた。




「おっ前なぁ…肩斬られてたじゃねーか無理すんなよー?」


「え、何愁肩痛めてんの!?」


「知らなかったのかよ、左之ほんとバカだな~」


「別に左側だし、そこまで深くもないよ」


「ほんとか~?っておいまたズレてんぞ」




ずんずん、と大きい足音をたててアタシの目の前に来る左之からはほのかに線香の香りがした。



あぁ、そっか…平助に会って来たのか。


あたしも後で会いに行こうかな。




「まったくお前いつもここズレんのな~。
ん、本当に肩怪我してんじゃん」


「だからそう言ってる」




バカなの、本当にバカなの。

嘘ついたってメリットないからね。




「お前はこういうとこ本当に無防備だよな~」




するすると包帯を撫でる指に、何処か違和感。




「……?」




そんな違和感を取り払うかのように左之は肩を叩き




「オラ!できたぜぇい!」




なんて言いやがる、ちょっと待て、めちゃくちゃ痛い。


この馬鹿力、もういっぺん井戸に落ちてしまえ。