ワケがありまして、幕末にございます。





「…ふ、あ」




見えない分敏感になった聴覚と触覚全部がアタシに訴えかけてくる。



…悲しいって。

泣きたいって。



それを叶えてあげるのが、アタシの役目。




「副長、自分、男なんスけど」


「俺男もイケるから心配すんな」


「副長、自分怪我してるんスけど」


「俺上手いから心配すんな」


「副長、ん」


「黙れ」




言葉ごとあたしは食べられて、体に纏っていた布も消えていって。



肌にかかる熱く籠った息と時折降ってくる冷たい水滴。


絡まる手と揺れて擽る髪。




「…、はぁっ…ん、ね、え」


「あぁ?」


「大丈夫、俺は…いるよ」




傍にいる証を刻むように、アタシは悲しみを背負った背中に爪をたてた。