ワケがありまして、幕末にございます。





「なんや市村は安定剤みたいやな…」


「そりゃ沖田さんと俺の仲ですから。

それはそうと何で止めなかったんだよ丞」




さっき沖田さんに声をかけた時、久々に長い時間瞼を開いた。

といっても、30秒も経ってないくらいだけど。



沖田さんは寝間着の上から浅葱色の羽織を肩にかけていて、なおかつ刀も近くに転がっていた。



推測できることはひとつ。


沖田さんも出合おうとしてたんだ。




「…止めたに決まっとるやろ。
それでも隙ついて部屋から出よって、苦労しながらここまで連れてきた所やったんや」


「……」


「疑うなや。

まぁこれで薬飲ましたし、しばらく落ち着く思うわ。
…ただ、こんだけの血ぃ吐いたんや。
覚悟したりぃや」




布団は赤色に染まっていて、その反対に沖田さんは白くて。


悲しい未来が手を振って待ってる。




「さ、次はお前の手当てや、先俺の部屋行っとき」




あ、そうだった…忘れていた。

思い出せばジクジクと痛みが戻ってきて、熱が出て来ている様な気がする。


人間の体って凄いな…。



なんて思いながら立とうとするが、足に力が入らない。


やば、思ったよりも血ぃ流しすぎた。


しょうがない、這っていこう。




「山崎、コイツは俺が()る。
お前は総司についててくれ」




ぐっ、と掴まれ浮遊感だと気付いた時にはもう土方は歩いていた。