涙が止まらなくて。
アタシも叫びたかった。
でもこれは本当なら3人だけの思い出のはずだから。
アタシは嗚咽が出る前にその場を離れた。
平助を斬ってしまった新人隊士は左之に屯所に戻れ、と言われ道を戻って行った。
けれどアタシがいる反対側はまだ殺気の充満した細い道。
…来る。
―――キィィン!
重さの加わった刀を受け止める。
…?
おかしい、風を切る音がもうひとつ…
――――ザンッ!
肩が一瞬にして熱くなり、ぶわっと血が吹き出す。
「服部…か」
二刀流の使い手で、実力もある厄介な相手だ。
「よくも…よくも伊東先生を…!」
吉田と殺り合った時と同じだ。
彼等には彼等の物語があった。
彼等が目指すべき道を、アタシ達は潰したのだ。
分かってる。
――――キンッ
――――カキンッ
けど此処を通らせることはしない。
だってこの先には、あの3人が。
最期の時を一緒に抱き合ってる。
今アタシに出来るのは、この道を守ることだから。
「死っねぇぇぇえ‼」
肩が熱くて痛いのか痛くないのか分からなくなってきた。
きっと痛くない。
痛いのは心だけだ。



