ワケがありまして、幕末にございます。





「なんてゆーか…今回の任務ピッタリだったんじゃないですか、斎藤さん」




平助と一緒に去った斎藤さんは実は情報を探る為の任務で伊東の元へと行った。


そして半年を経て、帰隊したのだ。




「む…やっぱり…そう思うか」


「「ええとても」」




こんだけ影が薄いんだ、情報聞き放題。


チラッと片目を一瞬開くと久しぶりの斎藤さんが前と変わらない佇まいで立っていた。


…嘘、ちょっと悲しそうな顔してた。

(´・ω・`)な感じ。


即答したのは可哀想だったかな。




「さっき、話の途中…だったよな…?」




しょぼーんな斎藤さんは話を逸らすようにぼそっと言う。


ホントこの人可愛いな、影薄いけど。基本無表情だけど。




「あぁ…良いんです、ほな自分も沖田さん寝かしてきます」




どうやら丞は沖田さんのお守りに戻るようだ。

その前に一言。




「丞。俺も丞と同じ様に思ってる。
…きっと沖田さんもそうしたいと思ってるよ」


「おぉ…おおきに」




力が抜けた様な息をふっ…と吐いた丞は、目を閉じたままのアタシの頭にポンと手を乗せ向こう側に歩いて行った。




「…総司、か」




アタシ達の前方で土方や新八っちゃん、沖田さんの笑い声が響く。




「…はい。
前、斎藤さん言ってましたよね。
今のこの瞬間は二度と来ないって。
きっと沖田さんも分かってるんですよ…だから"今"を皆と一緒にいたいんだと思うんです」


「……」


「過去には戻れないけど、思い出には浸れるから」




少し声が震えた。


だってしょうがないんだ、あんなにも過去が恋しい。




「……」




斎藤さんもアタシもそこからは無言で、ただ皆の声を聴いていた。




また時代が動く…




隣からそんな言葉が紛れて聞こえた様な気がした。



















十一月十五日

近江屋事件

―――坂本龍馬 暗殺