ワケがありまして、幕末にございます。






「沖田さん」


「ぎくぅっ」


「何処に行くつもりですか」


「……えへ」




丞が医者になって帰って来た頃、沖田さんはもういつ吐血をしてもおかしくない状態にあった。




「市村もなんか言ったってや」


「んー?俺は沖田さんの味方だよー?」


「愁くん…!」




語尾に間違いなくハートが付いている沖田さんは、アタシの持っている焼き芋が食べたくて食べたくて仕方がないみたいだ。


けど食べさせる訳にはいかない。




「そういえば1年前俺が風邪ひいちゃった時。
結局俺焼き芋食べてないんですよね」


「…そんなこともありましたかね~」


「何故か全部食べられていたみたいで」


「へ、へぇ~…」


「ほんとなんでですかね~、不思議だな~」


「……愁くん、あの、私もそれ食べた…」


「なんであの時残ってなかったんですかね~」


「……ぐすっ。
やまっ山崎さぁーん!助けてくださーい…!」




こんなに笑っていてもきっと沖田さんはめちゃくちゃ無理をしていて。


顔だって青白いし、触れた腕だって。

…こんなに細かったっけ。




今の沖田さんの状態を丞は土方には言っていない。

沖田さんも見せようとしない。



土方さんは沖田さんと同じ病で家族を失っているから。



見せたくないんだろう、自分が苦しんでる姿を。




「…市村」


「ん?」


「市村は知ってる…イヤ分かってるんやろ?」


「…うん」


「俺もな、どうにかしたいねん。
今安静にしておけば少しでも長く生きられるかもしれん。
せやけどその時間よりも今のこの瞬間の方が大事に思えてしゃーない」


「…斎藤さんと同じようなこと言うね」


「…俺が何か言ったか?」




あれ、後ろからなんか聞こえるなぁ。

…この声は…じゃない、この影の薄さは、




「斎藤さん、ほんまビビるんでやめてください」




ですよね、心臓バックバクだよ、まじで影薄い!