「…お前もなんか言うかと思った」
縁側で恒例のお茶タイムをしていると、部屋から出てきた土方が言った。
煙管の匂いがする、おおかた火を付けたのだろう。
「なんかって?」
「行くな、とか…俺も一緒に行く、とか」
「俺はなんも言わないし、行かないよ」
「そうか…」
だって行ったら土方、泣いちゃうもんね。
「…おい、聞こえてンぞてめぇ」
「はっ、久々に心の声が!」
「誰が泣くかばか野郎」
「えー寂しー」
「けっ、言ってろ」
アタシの背にゆっくりともたれた土方は、そのまましばらく動かなかった。
慶応三年
伊東甲子太郎、他15名が孝明天皇御陵衛士として新選組から脱退後
新選組はじわじわと崩れ始めた。
田中、武田、佐野など脱走、脱局が相次ぎ
更にその年の11月――――