「じゃあな」




それは決して晴れ晴れとした笑顔ではなかった。



























1月 薩長同盟成立

――そして3月




「俺伊東さんと一緒に行く」


「…は?」




平助がそう言ったのはいきなりだった。

いや、伝えたのがいきなりなだけで平助はずっと悩んでいた。


でも、それを左之達が知るワケもなく。




「な…にいってんだよ!
俺等ずっと一緒だっただろうが!」


「だった、だろ?」


「バッカじゃねぇのか!
なんでいきなり!」


「俺はお前等よりも伊東さんを選んだんだ」


「…んで!なんでだよ!」


「同胞…同じ北辰一刀流だからな」


「んな奴等よりっ、俺たちゃぁダチだろうがよ!」


「だったら‼」


「……」


「ダチだったら笑顔で送りだせよ!
遠くても…離れててもダチなんだろう!」




あたしは物陰に隠れていて平助や左之の顔は見えないけど。


悲痛、動揺、憤り

声に全て現れている。




「…平助」




今まではずっと黙っていた新八が静かな…とても静かな、無感情な声で言葉を紡いだ。




「俺はお前が決めたことなら何も言わない。
たださ…お前、それで笑えるの?」




水面の様な静かさだった。

怒ってる訳でもない、悲しんでる訳でもない、ただただ無機質な声だった。




「…笑えるさ」




吐くようにその言葉をおざなりに言い、平助は去っていった。




「その顔でいうのかよ、あの馬鹿ヤロウ…!」



ゴン!

床を殴る左之に、




「……」




相変わらず無言を貫く新八っちゃん。