ごほっ…ごほっ…
「…沖田さん?」
辛そうな咳に目が覚める。
「ごめ、…ごほっごめんなさい、起こしちゃいました…?」
青白い顔で笑顔をつくる沖田さん。
背中を擦ると、春に出会った頃より一回り小さくなっているような気がした。
「ごめんなさい、俺の風邪移しちゃいましたか」
「良いんです、私が愁くんと一緒に寝たかったんですから」
「でも…」
「愁くん。自分の身体です、自分がよく分かります。
まだまだ生きますよ、私」
ふふっと本物の笑顔を向けられては何も言えない。
「ずるいなぁ…沖田さん」
こっちも釣られて笑うと沖田さんはまた嬉しそうに目尻を下げた。
「いつもね、悔しかったんです」
「……?」
「土方さん」
「…土方?」
何故土方が出てくるのだろう…はっ。
もしかして…
「土方さんが愁くんをずっと気にかけてて、なんだか取られたみたいだ…って」
嫉妬か、嫉妬なのか。
土方め、沖田さんが寂しがってるじゃん、しっかりしろよ。
「けど実際は違いました。
愁くんの近くに居たいのは私だったんです。
いつも隣にいる土方さんを見て、悔しくってですね」
唇を突き出す沖田さんは可愛いくらいその仕草が似合っている。
「俺、じゃなくて土方を見て、ですか?」
「そうです!
勿論土方さんも近藤さんも好きですよ。
でも愁くんはまた違くて…何と言うか、双子、みたいな感じですかね?」
「ね?って言われましても…」
「だって私もよく分からなくなってきちゃいましたよ~。とりあえず、私にとって愁くんは家族とか恋人とか越えたところにいるんです」
「…うーんと、大切な存在、って思っていんですか」
「はい!」
沖田さんにそう思って貰えるなんて。
感動と同時に嬉しさがこみ上げる。
「俺も…好きですよ、沖田さん」
家族とか、恋人とか越えた次元で。
布団の中で2人ふふっと笑い合えば、また眠気がやってくる。
「私はそろそろ自分の部屋に戻りますね。
…私のが移ってしまわないように」
「…沖田さん」
「ほらほら愁くん、風邪なんですから早く寝なさいっ」
あの…言うのなんですけど、起こしたの貴方です。
まぁでもまた可愛く障子から手を振ってるから許してあげようかな。
「おやすみなさい、愁くん。
添い寝、またしてくださいね」
「待って…ます…」
そしてまたアタシは瞼を閉じ、夢の中に意識を落とした。
これが最初で最後の、沖田さんとの添い寝だった。