ワケがありまして、幕末にございます。






「い、生きはります」




ゴク、平助の咽が動く。

近くに当てていた扇子をどかし、そうどすか、とにっこり笑った。




「はっはっは、凄いな愁くんは!
ずっと見てたいくらいの舞だったぞ!」



「っつーか色気ってぇの?
なんか色々すげーわ」


「ほんまに、これで女やったらウチに来て欲しぃくらい」




もったいないわあ


結構本気で残念がってるお姉さん達には、ハハハ…と笑う。



すんません、女です。

気付いて、貴女達と一緒。

や、やっぱ気付いちゃダメ、住む所なくなる。




「フッ…ククッ…」




なんか変な音が聞こえるな…と思ったら皆の声の合間に土方の笑いを堪える音。



…あの野郎。

くそう、アイツ帰ったら覚えておけよ!










「ーー…さて、ちょうど酔いも時間もいい頃合いだ。
皆行くぞ」



来たときとは違い、皆ゆっくり、ゆったりと歩を進めている。


アタシも目を完全に閉じてひんやりと冷たい空気を感じながら一歩。また一歩。



この地が冷たい白に覆われる頃、アタシは…いや、新撰組はどうなっているのだろう。


少しだけ、ギリ…と胸が痛くなる。

それは気のせいだと言うように次は目の奥の神経が鷲掴みされているような痛みがくる。



この時間は永遠には続かない。


願っても、願っても、叶わない。




「……愁?!」




自嘲的にフッと笑ったあとアタシの意識は一気に闇に堕ちた。