ワケがありまして、幕末にございます。






「アレは感染するって知ってたかい?」


「とりあえず、一通りは知ってます」




結核菌が肺に巣食い、初期症状として痰、微熱、寝汗、だるさ等々。

更に症状が進むと血痰が出たり喀血する、赤い病。

菌は確実に肺を侵食し、最期は呼吸困難で…。



沖田さんの場合、もう最終段階に近づいていってるのではないかと思う。




「それで、あとどれくらいなんだ」




一番アタシが聞きたかったことを土方が口に出した。










「…血を吐いたら、1年。
持つか持たないか、だ」











『お医者さんって辛いですよね。
こんな思い、させたくないんですけど。

私は決して強くない…。
分かりたくない、分かろうとしない、ただのワガママな人なんです。

でもきっとお医者さんは…松本先生は違うから』




「診察ありがとうございますって笑顔で言われちゃあもうどうしようもないさ」




悲しく笑む松本先生と、目を一瞬細める土方。




そ、っか…


歴史上から計算すると沖田さんが居なくなるまであと、3年。



数字に置き換えるのは簡単だ。



けれども沖田さんの苦しむ姿は見たくない。

いや違う、苦しませたくない。


出来るだけ苦しまずにいって欲しい。



あと2年の内に沖田さんは本格的に血を吐き、残り1年で…――。



…沖田さんを苦しませない様に、アタシは何ができるだろうか…。