ワケがありまして、幕末にございます。





「…アイツ、は」




襖の向こうに着地した彼はいつもよりトーンが低い。




「土方は知ってるよ。
あの人達が何か企んでること」


「さよか…」



じゃなきゃ前の集まりの時に伊東の顔を見てろなんて言わない。




「丞。
俺は土方を守るお前を1番信頼してる」




最後の、最期の時まで。



守るのはアタシじゃなくて、きっと丞だから。




「いきなり何…」




アタシの真剣な声色に丞は次の句を紡ぐのを渋った。




「何もない。
…じゃ、な」


「あ、あぁ…」




言える時に言っておかなきゃ。


これから忙しくなるから。




喉がカラカラする。


手足も重い。


頭もズキズキする。



けれど、彼の所に行かなきゃ。


早く。



行かなきゃ。