ワケがありまして、幕末にございます。








「……あ」




彼が呟く。


アタシの視界は真っ黒。


何が起きているか分からない。




「お前、死ぬぞ」


「…は?」




真上から声がして、やっと状況が理解出来た。






アタシと彼、木刀が当たる寸前に審判をしていた男が間に入り、アタシの木刀は素手で掴み、彼の木刀は自分が持っていた木刀で払い、今に至る。




「総司」


「ご、ごめんなさい…」


「俺に言ってもしゃぁねぇだろ」


「うっ…。

あの、すいません…。
私手加減出来ないらしくて…」


「らしいじゃねぇよ」




これでもかと言うほど落ち込む彼には、さっきまでのような怖さは見えない。




「気にしてませんよ。
それに…楽しかったです、ありがとうございました」




アタシがそう言うとパアッと彼の表情が明るくなった。



…これとさっきの顔が一緒とは思えないな。