ワケがありまして、幕末にございます。





「ま、とりあえずてめぇはその怪我を治すことに専念しろ」


「あぁ、そういえば」




傷に手を添えるとあの男の記憶がよみがえる。



緩められるサラシ。

ねっとりとした舌に冷たい指。




「…、」




キモチワルイ。




「おい?」


「ハハ、今更震えるなんて、」




可愛らしい女じゃあるまいし。



震えを止めようと必死に自分で自分を抑え込む、と。




「やめろ、傷に障る」




ふわり、煙管の香りに包まれた。




「…あの時、外にいたら声が聞こえた。
お前の、苦しむ声が。
急いで行ったけど…悪かったな」


「ヤだなー土方が謝ることじゃー…」


「いや根本的に1人で行かせた俺がいけないんだ」




そんな暗い声色で言わないで欲しい。




気持ち悪いから。




「て、め、え」


「あぁ!
心の声が!!」




ゴリゴリ、また頭を弄られる。


え、マジに痛いからね。

これ結構痛いからね。