ワケがありまして、幕末にございます。





「…?」


「土方はさっき『ここから出て生きるか、ここに残って死ぬか』って言ったけど。
アタシはここを出たら生きていけない。
ここにいることが、ここでアタシの大切な人を守ることが、アタシの存在理由。

俺は新撰組…近藤さんや土方を守る為に刀をとる。
その為だけに強くなる。

…そう決めたんだ」




土方がなんて言うか分からない。

やっぱ出ていけ、って言うかもしれない。


目を閉じているから彼がどう出るか分からない。



…なんてのはただの言い訳で、目を閉じて逃げているんだ、アタシ。

拒否られるのを怖がっている、ただの臆病者。




「あの夜」




いきなり喋った土方に体がビクつく。




「お前はどこか不安定な存在でよ。
まぁそれは今もそこまで変わりゃしねぇが…だから思わず言っちまったけど、あの言葉は嘘なんかじゃねぇから」




低い声が言葉を紡ぐ。




「“素直にさらけ出して見せろよ。
…俺も一緒に背負ってやる”」




スルっと髪を撫でられまたビクつく。



ビビッてんな、とそのまま頭をゴリゴリされた。



…痛い。