ワケがありまして、幕末にございます。





「……」


「……」


「……」


「……」




長い長い沈黙を経て土方が鋭い冷たさを含んだ声を発した。










「生きるか死ぬか…どっちがいい?」








「…さぁ?」











静かな中フハ、と吹き出すような音。




「おまえはそう言うと思ったよ。
…最初、『鬼になれるか』と聞いた時もそうだったよな」


「そうだっけ?」


「あぁ。

…お前の好きにしろ。
ここから出て生きるか、ここに残って死ぬか。
お前の自由だ」


「え…?」




想像と正反対の言葉。

直ぐに出ていけと言われると思っていたのに。




「元から総司が無理矢理入隊させたようなもんだからな」




最初から女と気付かなかった俺にも非はある。



煙管を口にくわえそう続けた。



煙管の匂いが部屋に充満する。




「…土方、俺は…。
アタシは、あの朝に…全てを吐き出したあの夜の翌日に、決めたんだ。
アタシはあの誓いを破らない。
破るつもりもない。
覚悟を決めたんだよ」